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10年前のワークステーションでSolidWorksを快適に — AIと進めた投資ゼロのPC延命術

10年前のワークステーションでSolidWorksを快適に — AIと進めた投資ゼロのPC延命術

「SolidWorksが重い」「アセンブリで非表示にしていた部品を表示に戻した瞬間に落ちる」── 中小製造業の設計現場で起きがちな症状です。買い替えの見積もりを取ると40〜60万円、すぐには動けません。本記事では、10年前のHPワークステーション(HP Z240)でAI(Claude)を相談相手にしながら、投資ゼロでSolidWorksを延命した実体験を時系列で公開します。結論から言えば、C:ドライブの空きを12GB→91GBに回復させ、NAS直アクセスをやめるだけで動作は「快適」レベルまで戻りました。

症状と環境

まずは出発点となった症状と、対象マシンの構成を整理します。

症状

  • アセンブリで「非表示」にしていた部品を「表示」に切り替えた瞬間にSolidWorksが落ちる
  • ファイルを開くのに数十秒〜数分かかる
  • 作業中の引っかかりが日常的に発生

環境

項目 内容
マシン HP Z240 Tower Workstation(2015年購入、当時50万円)
CPU Intel Xeon E3-1270 v5(4C/8T, 3.6GHz)
GPU NVIDIA Quadro K2200(4GB VRAM)
RAM 32GB DDR4 ECC
ストレージ SSD 256GB(C:) + HDD 500GB(D:)
データ保管 LAN内のNAS(HDDモデル)

「スペックとしてはまだ使えると思う。このマシンで延命したい」というのが経営判断です。買い替え予算をすぐに使わない前提で、できることを洗い出していきました。

SolidWorksでアセンブリ展開時にクラッシュが発生する症状フロー図
図1: 非表示→表示切替でSolidWorksがクラッシュする症状フロー

AIに相談しながら原因を切り分けた

症状をClaudeに正確に伝え、対話しながら真因を3つに絞り込みました。AIに相談する利点は、症状から複数の原因仮説を並列で示してくれること。設計者本人ではIT専門知識が足りない領域を埋めてもらえる点です。

原因1:GPU不足とTDR(タイムアウト)

落ちる瞬間のGPU使用率は瞬間50%程度。「50%で落ちるのはGPU性能不足ではなく、ドライバのタイムアウト(TDR:Timeout Detection and Recovery)でSolidWorksが道連れクラッシュしている可能性が高い」とAIが指摘してきました。Quadro K2200の4GB VRAMは、現代のSolidWorksには確かに不足気味です。

原因2:NASのHDDがランダムI/Oで遅い

SolidWorksは大規模アセンブリ読み込み時、数百〜数千ファイルをランダムに読み込みます。HDDのIOPS(1秒あたりの入出力回数)は100〜200程度で、物理的に追いつきません。ネットワーク帯域より先に、HDDのヘッドがボトルネックになっていました。

原因3:C:ドライブの空き容量が12GB

ページファイル(仮想メモリ)が確保できず、SolidWorksの一時ファイルも書けない状態です。「これがGPUより先に直すべき真犯人かもしれない」とAIが判定しました。

SolidWorksが重い・落ちる症状の原因切り分けマップ(GPU TDR NAS HDD C空き不足)
図2: 「重い・落ちる」の3つの原因と、それぞれの対処方針

投資ゼロの段階的対処

AIの助言に沿って、お金をかけずにできる順から手を打っていきました。

Step 1: ローカルアカウント化+OneDrive撤去

Microsoftアカウント連携を切り、OneDriveの自動同期も停止。常駐プロセスを減らしつつ、数GBを解放しました。

Step 2: 休止ファイル削除(一発で32GB回復)

管理者コマンドプロンプトで powercfg -h off を実行。RAM容量と同サイズの hiberfil.sys(32GB)が消えます。SSD搭載機なら休止状態はほぼ不要です。

Step 3: ディスククリーンアップ&Tempフォルダ全削除(+49GB)

WizTreeで容量を喰っている犯人を可視化したところ、AppData\Local\Temp に32.8GBの一時ファイルが溜まっていました。%temp% をエクスプローラで開き、開けるファイルから全削除しました。

Step 4: 使っていないアプリのアンインストール

Adobe Creative Cloud一式(After Effectsキャッシュ含む)で15GB+19GBのキャッシュを解放。設計用PCに残っていた前の用途のアプリが、思いのほか容量を喰っていました。

結果:C:ドライブの空き 12GB → 91GB(約7.5倍)。1円も使わずに、ストレージのボトルネックは解消できました。

C:ドライブ空き容量の回復ステップ別グラフ 12GB→18GB→50GB→72GB→91GB
図3: 4ステップで12GB→91GBまで回復したC:ドライブ空き容量の推移

Step 5: NASのHDDボトルネックを回避

作業フォルダ C:\CAD_Work をローカルSSD上に作成。案件ごとにNASからローカルにコピーして作業し、夕方に同期用バッチでNASへ書き戻します。バッチの中身はシンプルなrobocopyです。

@echo off
set SRC=C:\CAD_Work\案件名
set DST=Z:\Data\案件名
robocopy "%SRC%" "%DST%" /E /XO /R:2 /W:5
pause

/XO オプションで「より新しいファイルだけコピー」するため、無駄な転送を抑えられます。これでSolidWorksから見れば「全部ローカルSSD」の世界になり、アセンブリ読み込みのランダムI/Oが劇的に改善しました。

SolidWorks作業のNAS直アクセスとローカルSSD作業の比較フロー図
図4: NAS直作業(Before)と、ローカルSSD作業+夕方同期(After)の比較

結果と所感

5つのステップを終えた時点で、SolidWorksの動作は「かなり早くなった」と体感できるレベルに戻りました。アセンブリ読み込み・部品の表示切替がスムーズになり、「非表示→表示で落ちる」現象も解消されました。投資ゼロで、買い替え予定だった40〜60万円を温存できた格好です。

AIを「無料の専属IT顧問」として使う感覚は、想像以上に実用的でした。専門業者に頼むと数万円のコンサル業務を、対話だけで進められる。重要なのは次の3点です。

  • 症状を正確に伝える:いつ・どの操作で・何が起きたかを具体的に
  • 現状環境を正確に伝える:CPU・GPU・RAM・ストレージ・OS構成まで
  • 結果をフィードバックする:対処後の挙動をAIに戻すことで仮説精度が上がる

AIは「直接操作はできない」ものの、診断と手順案内は的確です。設計者が前面に立ち、AIに伴走してもらう構図は、中小製造業のITトラブル対応にとって現実的な解だと感じました。

設計用PCで「やる前」にチェックすべきポイント

✅ C:ドライブの空き容量は50GB以上あるか:最低でも30GB、できれば50GB以上を確保しましょう。

✅ 作業データをHDDのNASに直アクセスしていないか:ローカルSSDに作業フォルダを置き、夕方バッチで同期する運用が安定します。

✅ GPUドライバはSolidWorks認証版か:Studio Driver等に揃え、Game Ready Driverのままにしない。

✅ Windows Defenderの除外設定にCAD作業フォルダを追加しているか:リアルタイムスキャンが意外なボトルネックになります。

✅ RealView GraphicsをOFFにできないか:VRAM消費を抑える効果があり、GPU不足機では特に有効です。

✅ ローカルアカウント+OneDrive停止で常駐を減らせているか:設計用PCはシンプルに保つのが基本です。

undermountainができること

当社undermountainは、機構設計と海外製造の一気通貫サービスを提供する一方、AI活用を「自社で実践し、その知見をサービスに活かす」スタンスで取り組んでいます。本記事のような事例は、実務で得た知見をそのまま発信したものです。

  • 設計現場のAI活用支援:仕様書自動作成・図面チェック・設計レビューでの利用ノウハウを共有
  • 古いCAD環境の延命診断:本記事のような実体験ベースの相談に対応
  • AIエージェント導入の伴走:中小製造業向けに「第一歩から実装まで」を併走
  • 設計〜金型〜量産の一気通貫:手戻りを最小限に抑える体制

「製造業のAI活用について、まず相談したい」というご要望にも対応しています。お気軽にお問い合わせください。


次回予告:「中小製造業がAIエージェントを使い始めるための第一歩」

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