「筐体の材料、何を選べばいいのか分からない」——プラスチック成形品の設計で、最初にぶつかる壁がこの材料選定です。樹脂の種類は数百種類ありますが、筐体設計で実際に使われる主要樹脂は5〜6種類に絞られます。それぞれの特性と「どんな製品に向いているか」の判断基準を整理しましょう。
筐体設計でよく使われる5大樹脂
まずは、筐体・成形品の設計で頻繁に使われる5つの樹脂を押さえましょう。
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
筐体設計の「万能選手」です。耐衝撃性・成形性・外観仕上げのバランスが良く、コストも手頃。通信機器や家電製品の筐体で最も多く使われています。塗装やメッキとの相性も優秀です。
PC(ポリカーボネート)
耐衝撃性はプラスチックの中でもトップクラス。透明グレードもあり、レンズカバーや医療機器の窓部品にも使えます。ただし材料単価はやや高めで、成形時の乾燥管理が重要です。
PP(ポリプロピレン)
軽くて安い、コスト重視の設計に最適な樹脂です。食品衛生法に適合するグレードもあり、食品容器や日用品に広く使われています。柔軟性がある反面、剛性は他の樹脂より劣ります。
POM(ポリアセタール)
摺動性(すべり特性)と耐摩耗性に優れ、ギア・カム・ヒンジなどの機構部品に最適です。寸法安定性も高く精密部品向き。ただし接着・塗装が難しいという特性があります。
PA / ナイロン(ポリアミド)
強靭でしなやか。繰り返し曲げにも強く、コネクタハウジングやケーブルクリップに適しています。吸水性が高いため、寸法変化には注意が必要です。

樹脂を選ぶ4つの判断基準
「どの樹脂を使うか」を決めるとき、以下の4つの軸で評価すると判断がしやすくなります。
1. 使用環境
屋内か屋外か、使用温度の範囲、紫外線の有無、薬品や溶剤に触れるかどうか。たとえば屋外で使う筐体にABSを選ぶと紫外線劣化が問題になりますし、アルコール消毒が必要な医療機器ならPP系が有利です。
2. 機械的強度
落下衝撃に耐える必要があるならPC、繰り返し負荷がかかるならPA、摺動部品ならPOM。「壊れない」と「しなやか」は異なる強度特性なので、用途に合った基準を選びましょう。
3. 外観要件
塗装仕上げならABSが最も相性が良く、テクスチャ(シボ)を入れるならABSかPC。透明部品にはPCかPMMA(アクリル)を選びます。なお、シボ加工面には通常より大きな抜き勾配が必要です。
4. コスト
材料単価だけでなく、成形のしやすさ(サイクルタイム・歩留まり)も含めた「トータルコスト」で判断しましょう。PPは材料単価が最も安く、PCは高め。ただしPCの耐久性が製品寿命を延ばすなら、トータルでは安くなることもあります。
用途別おすすめ樹脂マップ
「結局、自分の製品にはどれを選べばいいのか」——具体的な用途別の推奨樹脂を以下にまとめました。
| 用途 | 推奨樹脂 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 通信機器筐体 | ABS, PC/ABS | コスパと難燃性(UL94 V-0取得可)を両立 |
| 医療機器筐体 | PC, ABS | 耐薬品性+オートクレーブ滅菌対応 |
| 産業機器カバー | ABS, PP | 耐久性を確保しつつコスト重視 |
| 透明カバー・レンズ | PC, PMMA | 光学透過性と耐衝撃性 |
| ギア・ヒンジ等の機構部品 | POM, PA | 摺動性・耐摩耗性に優れる |
| 食品関連 | PP | 食品衛生法適合グレードあり |

コスト比較:材料単価の目安
一般的な汎用グレードでの相対コストは、安い順に PP < ABS < POM ≒ PA < PC となります。ただし、グレード(難燃・ガラス繊維入り等)や発注数量によって大きく変動します。
また、原油・ナフサ価格や為替レートの影響も受けるため、「今の実勢価格」は必ず材料メーカーやサプライヤーに確認してください。

設計段階で確認すべきチェックリスト
✅ 使用環境の温度範囲を確認したか:各樹脂の耐熱温度(HDT)と実使用温度を突き合わせましょう。
✅ 難燃規格(UL94等)の要否を確認したか:通信機器や医療機器では必須になるケースが多いです。
✅ 耐薬品性の要件を洗い出したか:アルコール・溶剤・油脂など、接触する薬品を明確にしましょう。
✅ 外観仕様(色・テクスチャ・透明性)を決めたか:樹脂によって塗装・シボ・透明の向き不向きがあります。
✅ 材料メーカーの推奨グレードを入手したか:同じABSでもグレードによって特性が大きく異なります。
undermountainができること
「この用途にはどの樹脂が最適か」——当社では、材料選定の段階からご相談いただけます。用途・コスト・量産性を総合的に判断し、最適な樹脂と設計をご提案します。
- 材料選定〜設計〜金型〜量産まで一気通貫:樹脂選定の段階から量産までワンストップで対応
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「どの樹脂を選べばいいか分からない」という段階から、お気軽にご相談ください。