お問い合わせ

BLOG / 製造業×AIの実践知見を発信します

ブログ

板金筐体 vs プラスチック筐体、どう選ぶ?

板金筐体 vs プラスチック筐体、どう選ぶ?

新製品の筐体を設計するとき、最初に直面するのが「板金で作るか、プラスチックで作るか」の選択です。判断を誤ると、コストが膨らんだり、量産直前に設計変更を迫られたりすることもあります。本記事では、板金筐体とプラスチック筐体の特性を5つの観点で比較し、量産数による分岐点と用途別の選び方まで解説します。

板金筐体・プラスチック筐体の基本特性

板金筐体は、鉄板・アルミ板・ステンレス板を切断・曲げ・溶接・塗装して組み立てる筐体です。代表的な素材はSPCC(一般冷延鋼板)SECC(電気亜鉛メッキ鋼板)A5052(アルミ)SUS304(ステンレス)。産業機器や通信装置の外装に多く使われています。

一方プラスチック筐体は、主に射出成形で量産される筐体です。ABS、PC、PC+ABS、PPなどの熱可塑性樹脂を、金型に高圧で流し込んで一体成形します。コンシューマ機器や医療機器の外装でよく見かける筐体です。

加工方法の違いから、両者は「強度」「コスト構造」「形状自由度」で大きく性格が異なります。どちらが優れているかではなく、用途と量産数に応じて使い分けるものと考えるのが正解です。

板金筐体とプラスチック筐体の構造比較図(曲げ加工と射出成形の違い)
図1: 板金筐体(曲げ加工)とプラスチック筐体(射出成形)の構造の違い

5つの観点で比較する

板金筐体とプラスチック筐体を、設計者が判断に使う5つの観点で比較します。

観点 板金筐体 プラスチック筐体
強度・剛性 ◎ 高い(特にSUS・SPCC) ○ 樹脂と肉厚次第
形状自由度 △ 曲げ・絞りに限界 ◎ 複雑な曲面もOK
初期費用 ○ 板金治具のみ(数万〜数十万円) △ 金型費(数十万〜数百万円)
量産時の単価 △ 加工工数次第で高め ◎ 数量効果で大幅低下
重量 △ 重い ◎ 軽い
放熱性 ◎ 金属が熱を逃がす △ 断熱材として働く
デザイン性 △ シャープだが直線的 ◎ 曲面・テクスチャ自由

大きく要約すると、板金は「初期費用が安く、強度・放熱性に優れる」プラスチックは「初期費用が高いが、量産で単価が下がり、形状自由度が高い」という性格を持ちます。どちらが優位かは、量産数・強度要件・形状要件の3軸で決まります。

量産数によるコスト分岐点

板金とプラスチックのコスト構造で最も大きな違いは、初期費用の桁が違うことです。プラスチック筐体は金型製作に数十万〜数百万円が必要ですが、板金筐体は治具程度で済みます。

その結果、量産数とトータルコストの関係は次のようになります。

  • 板金筐体:1台目から量産まで単価がほぼ一定。トータルコストは量産数に比例して上がる
  • プラスチック筐体:金型費を量産数で割るため、量産数が増えるほど1個あたりの償却が下がる

一般論として、500〜1,000個前後を境にプラスチックがコスト優位になるケースが多くなります。ただし、形状複雑度・素材・表面処理によって分岐点は前後するため、最終的には個別の見積もり比較が必要です。

板金筐体とプラスチック筐体の量産数とトータルコストの分岐点グラフ
図2: 量産数500〜1,000個付近でプラスチックがコスト優位に転じる

用途別おすすめの選び方

「量産数」と「強度要件」の2軸で考えると、用途別の選択指針が見えてきます。

  • 少量生産(〜100台)/ 試作機:板金筐体が有利。金型費を回収できないため。
  • 中量〜量産(500〜数千台以上):プラスチック筐体が単価で有利。
  • 強度・剛性が必要(産業機器・サーバーラック・通信装置):板金筐体が定番。
  • 複雑な曲面・軽量化が必要(コンシューマ機器・医療機器の外装):プラスチック筐体。
  • 放熱が課題(電源・パワーアンプ):板金(特にアルミ)+放熱フィン。

また、「メインフレーム=板金、外装カバー=プラスチック」の混合構成は、産業機器で多用される定石です。強度と意匠性を両立できる現実解として覚えておくと選択肢が広がります。

量産数と強度要件で見る板金筐体とプラスチック筐体の用途別選択マップ
図3: 量産数×強度要件の4象限で見る材質選択。混合構成も有効な選択肢

設計時のチェックポイント

✅ 量産数の予測は固まっているか:500個未満か以上かで判断が大きく変わります。

✅ 強度・剛性要件は仕様書に明記されているか:耐衝撃・耐荷重・剛性の数値があると比較が容易です。

✅ 放熱が必要な内蔵部品はあるか:電源・CPU・パワー素子の有無で判断が変わります。

✅ 外観の質感(マット・グロス・テクスチャ)にこだわるか:質感要件が高いとプラスチックが有利です。

✅ 重量制約はあるか:持ち運び製品やウェアラブルでは軽量化が決め手になります。

✅ 後工程(塗装・印刷・シルク)まで含めた総コストで比較したか:単体加工費だけで判断しないようにしましょう。

undermountainができること

当社では、板金筐体・プラスチック筐体の双方で設計実績があります。「どちらで作るべきか」の選択そのものから提案できるのが強みです。

  • 両材質の設計実績:板金(SPCC・SUS・アルミ)と樹脂(ABS・PC・PC+ABS)を案件ごとに最適化
  • AI活用のコスト試算:量産数×形状から最適な材質をスピーディに提示
  • 国内外工場ネットワーク(熊本・深圳・台湾):板金加工・金型・成形を一貫手配し、コストを最適化
  • 混合構成の提案:メインフレーム=板金、外装=プラスチックの組み合わせも一気通貫で対応

「材質選定の段階から相談できる設計パートナー」として、お気軽にお問い合わせください。


次回予告:「ウェルドラインの原因と対策、設計段階でできること」

← ブログ一覧に戻る