今年2月に台湾の板金工場へ打ち合わせに行った際に、空き時間を利用して故宮へ行きました。
国立故宮博物院は2016年12月2日以降、館内での写真撮影、ビデオ撮影を許可されており、お気に入りの作品を撮影しました。写真は一本の象牙から製作された作品で、”象牙多層球”という作品です。
鎖の部分は一つ一つの輪に切れ目が入っていませんので、1個の塊から少しずつ形を整えながら削り出し、連続した複数の輪を作り上げていることがわかり、その技術と労力に感嘆します。
メインとなる中央の球体ですが、多層独立構造となっており、例えば一番外側の層とその内側の層は独立しているので、各々が回転できます。詳しくは”象牙多層球”で検索してみてください。各層が独立できるということは、外側から少しずつ内側の層との間の塊を削り出しているということです。親子2代で製作する作品もあるとのことですが、想像できないほどの時間を費やされているのだと思うと、現代のものづくりに対するアンチテーゼとなっていると感じずにはいられません。
現代のものづくりでは、スピードが求められる機会が多いのですが、仕様を満たすためだけのものづくりではなく、製品に対してどれだけ様々な角度からその製品を検討したかという”見えない時間”をどれだけ費やしたかによって、その製品の成果が表れるのではないかと改めて感じました。